[ 読書レビュー ] 『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』 10年に一度くらいのエポックメーキングな本である。そして、我々は、とんでもない地点に立っている。

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読書習慣を持つ者でも、自分のターニングポイントとなる書に出会う事は、そうない。
この本は、僕にとって、そういう本である。
15年振りのような気がする。その15年前の本が、なんであったかは忘れた。

余談だが、『本を読む本 (講談社学術文庫)』(古典的名著)を読んで、悟った事であるが、本当に「読んで良かった。」と思える自分の人生の中で重要な本とは、10冊くらいであろう。
そして、その10冊と出会うには、少なく見積もって、100冊くらい読まねばならないだろう。
そういう割に合わない営みが嫌なら、本を読まない方がよかろう。

話を元に戻そう。
「近代というシステムは終わった。」
これは、僕が親しむ現代思想の世界では、よく言われているフレーズである。
社会学においても。
色々な概念などが制度不良を起こし、耐久年度を過ぎているのだなとは、理解していた。
が、ここに来て、本当に近代というシステムが終わってしまい、新たなシステムが駆動しているのだと実感した。

人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか (日経ビジネス人文庫)

内容紹介

1990年代半ば以降、急速に進展したIT(情報技術)革命とグローバリゼーションで、世界経済システムは大きく変容した。
グローバリゼーションの本質をデータと歴史分析で描き出す。ロングセラーを文庫化。

グローバル経済の姿を厖大なデータと歴史分析で描き出し、2000円を超える経済書としては異例のベストセラーに加筆して文庫化。

内容(「BOOK」データベースより)

IT(情報技術)革命とグローバリゼーションで、世界経済システムは大きく変容した。
1995年を境に、もう戦後経済の常識は通用しない。
詳細な経済データと巨視的な歴史分析によってグローバリゼーションの意味を問い直す。各誌紙絶賛のロングセラーを文庫化。

読書レビュー

前半部分、バブル崩壊以降、景気と賃金が連動しない、インターネット革命がグーテンベルクによる出版資本主義に匹敵するなど、重要な「新しい現実」がデータ共に述べられている。
が、僕にとっては、好景気→賃金上昇を伴わない。の→の中味が解らないのである。
マクロ経済とか、簡便に説明できないにしろ、それなりに説明されれば理解できる読解力があるとは自負しているのだが。





なので、目を開かされるような事実の解釈が連発され、興味をそそられるにも関わらず、納得できないのである。
例えば、財政再建に努力した国の成長率がマイナスで、財政赤字の国の方がプラス成長なのは、何故なのかといった点など。

概して、データは示されるものの、その因果関係をあまり示されていないように思う。
金融経済が実体経済より優位に立つとは何を意味するのかとかも、よく解らなかった。

ただ、日本の80年代の土地バブルは、システムが崩壊する際に、かつてヨーロッパでも起きた事実には大きな新鮮な目を持って読んだ。

しかし、経済データを使わない国民意識調査を用いた後半部分は、わかりやすい。

我々は「知る権利」を阻害されている。

この本は、普段、ニュースに接しているだけでは知り得ない事実が満載である。
というか、ジャーナリズムは、戦後経済の延長線上で解釈し、報じている。

  • もはや、先進国の経済は、原油の値段によって、左右されない。
    なので、原油高騰を報じても、あまり意味が無い。
  • 景気がいいにも関わらず、労働者の賃金が上がらないのは、労働者の7割を占める非グローバル企業の業績が良くなっておらず、一人、グローバル企業の業績のみが伸び、そこでの賃金は伸びているのであって、事実がおかしい訳ではなく、解釈がおかしいのである。

などなど。

この事実を知り、明日に備え、SNSなどにうつつを抜かすのでは無く、黙々と個人で自分の人生を見つめ直し、新たな戦略を打ち立てるのみである。
それが、趣味を堪能するなりにしても、本書の事実を知っているのと知らないのとでは、大きな違いが存在する。

最早、グローバル企業と非グローバル企業では、同じ国に生きていても、同じ国を共有しているとは言えない。
グローバル企業の成長には、本国のみの政策や社会風潮には依存しないのである。

労働生産性について

日本の労働生産性が低い事が問題となっているが、本書では、日本の流通業の生産性とGDPの成長率が相関している事実が語られている。

やはり、闇雲に何でもかでも労働生産性を上げろ!ではなく、こういうデータに基づいて、労働生産性が上がれば効果的なものから取り組むべきであろう。

我々はトンデモナイ地点に立っている。

本書は、2007年刊の文庫化であるが、本書が書かれた時点から12年という年数が経過している。
現在の安倍政権は、小泉政権の「改革無くして成長なし。」の延長線上にあるが、どう見積もっても舵取りが、戦後経済復興の延長線上にあるようなあさっての方向にあるのだ。

そういう点でも、個人による人生の見つめ直しと人生戦略の練り直しが必要なのだ。

この本は、僕にとって、興味深く、一気に割と短期間で読み終えた書である。






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