東野圭吾なら「白夜行」から


非常に多才で一口にミステリーといっても色々な切り口から多くの作品を書いていらっしゃる東野圭吾さんですが、一番の傑作は「白夜行」ではないでしょうか。
東野圭吾さんの作品は、結構読んでいますがこの「白夜行」で一皮むけたのではないでしょうか。
ただし、この作品以降、いわゆる社会派ジャンルに挑戦していらしゃっるようですが、あまり成功しているとは言い難いです。

この「白夜行」ですがジャンルとしては、ノワールです。ノワールというのは、フィルムノワールからきています。
フィルムノワールというのは、50~60年代頃のアメリカの犯罪映画から影響を受けたフランスの少し暗い犯罪映画のことを指します。ただし、最近ではタランティーノなどや他のハリウッド映画にも盛んにこのフィルムノワールという言葉が使われています。

小説の分野では、映画にもなった『LAコンフィデンシャル(文春文庫)』のジェームズ・エルロイなどが代表的なノワール作家です。
日本では90年代頃に登場した『不夜城 (角川文庫)』の馳星周さんがノワールの草分けとされています。映画と同様に暗い犯罪小説の事を指します。
「白夜行」ですが、単にノワールの作品というよりも80年代前半の時代背景を描いた青春映画でもあります。
それだけよく出来た作品です。

東野 圭吾 集英社 2002-05-17
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(あらすじ)
荒筋を少しだけ紹介すると、物語のプロローグとしてある中年男性が殺されるところから始ります。
しかし、動機のありそうな人物を調べても、アリバイがあったりして結局未解決になります。
その後、この事件にかかわった刑事が定年後もこの未解決の殺人事件を追うのですが、これは物語の本筋ではありません。
ただし、この刑事が最終的に主人公の男と女を追い詰めるのですが。
この定年後もありふれた殺人事件を定年後も熱心に調べるというのが少しリアリティに欠け、この作品の唯一の弱点となっていると僕は思うのですが。

<『白夜行』の主人公>
物語の主人公は、この殺人事件当時の少年少女です。
この少年少女が社会に出てのし上がっていくまでを時代背景を描きながら時系列的に追っていきます。
ただし、少女は社会的に地位のある男性と結婚し、ブティックを何軒か経営するまで成功します。
しかしながら、少年は、表の世界から一歩引き裏街道の世界で暗躍します。
裏の世界といってもヤクザの世界ではありません。

東野圭吾さんは他の小説にも色々な独創的な金儲けの商売を書いているのですが、小説家にならなかったら起業して社長にもなれたのではないかと思わせるほど面白い商売の方法を考え出します。
実際には小説家になる前は、サラリーマンだったらしいですが。

この小説にも、人妻相手のいかがわし商売や80年代半ば爆発的にヒットした「スーパーマリオブラザーズ」に関する金儲けなどが登場します。

また、この作品は主人公の男女を他の複数の脇役から見た視点でも描かれており、多角的にこの男女を描いています。
この点が続編の『幻夜 (集英社文庫)
』とは一味違うところです。

この物語のキモは、女性が成功する過程でそれに批判的な人や競争相手が、小さな事件をキカッケに仲良くなるのですが、その小さな事件にもう一人の主人公の男性が無関係でないらしいという所です。





続編として『幻夜 (集英社文庫)』が昨年出版されていますが、これは『白夜行』の主人公とは全く無関係です。
この対照的な男女の生き方の設定を借りています。
それなりに読ませますが、やはり『白夜行』に比べると質が落ちます。
白夜行 (集英社文庫)』は非常に分厚い本ですが、一気に読ませます。
続きが知りたくて知りたくて仕方がないという作品は何十年ぶりかでした。
それだけの傑作作品です。

僕はこの作品で東野圭吾さんに出会ったのですが、他の作品もそれぞれ水準以上なのですが、よかったなと思わせる作品は、僕が理系だということもあり『変身 (講談社文庫)』か『宿命 (講談社文庫)』でしょうか。

東野圭吾さんの作品は映像化されている作品も多く、上述の『変身 (講談社文庫)』も映画化されるそうですし、ベストセラー作家なので要チェックです。

この『白夜行 (集英社文庫)』を越える作品をぜひ書いて欲しいです。

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