もし、あなたが、戦国大名がどうとかではなく、歴史学の本当の面白さを知りたければ、阿部謹也・網野善彦・石井進・樺山紘一の対談本で、かつ中々無い名著 『中世の風景』(中公新書)を紐解いて欲しい。
中世の風景 (上) (中公新書 (608))
網野善彦氏は、言わずと知れた多数の著作において、市民に語りかける、日本歴史学のトリックスターであり、阿部謹也氏は、「ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界 (ちくま文庫)」などの著作がある日本の西洋史学において、アナール学派を取り入れた異色の歴史学者である。
後年、世間に拘り、研究を行っている。
また、樺山紘一氏の「西洋学事始 (中公文庫)」などを開いてみると、歴史から見捨てられた骨相学の意味を読み解くなど、図像学的な面白さに満ちている、映画「薔薇の名前」が好きな人なら、堪らない面白さに満ちている。
石井氏については、よく知りません。
そんな4人が対談し、面白くないはずがない。
それこそ、縦横無尽に、「都市、職人、音、異端」などについて、論じている。
「そう言えば、音って、今まで、歴史学では、研究されてこなかったですねぇ。」
わくわくするではないか。
古来、日本の山の頂には、神がいる神聖な場所とされていた。
この本を読んだのは、30年くらい前の学生時代であったが、その辺を、西洋では、どうであったのかとか、また、再読してみたい。
一般人を対象に本を書いてきた阿部謹也や網野善彦である。
非常に読み易かったと記憶している。
対談本で名著というのも、非常に少なく、尚かつ、巨人と巨人が対談したからといって、必ずしも面白いとは限らない。
が、この書は、滅多にない名著である。
この本を読む者は、なるほど、歴史学というのは、こういう事を研究しており、本来の歴史学とは、こういうものであるのかと目を開かせてくれるであろう。