このジョージ・オーウェル – Wikipedia.作の「一九八四年」は、大ベストセラーとなった村上春樹の「1Q84」の題名の下敷きになり、内容も「1984年」を意識された小説です。
「1984年」は、スウィフト『ガリヴァー旅行記』と同じくディストピア(反ユートピア)小説として有名であり、暗いそうであって欲しくない未来を描いています。
スターリン体制下のソ連を連想させる全体主義国家を描いています。
1949年刊行。
ここでは、そのジョージ・オーウェルの「1984年」に登場するファシズム国家を支える装置を、ご紹介致します。
この「装置」とは、僕が学生時代に一世風靡していたポストモダン用語であり、フランス現代思想用語であります。
システムのような意味合いがあります。
尚、このファシズム装置の説明は、文中の言葉を用いて解説しますが、この記事を読んでも、この「1984年」の輪郭はおぼろげながらわかると思いますが、これから読もうと思う方が、この記事を読んでも、損なわないのではないかと考えます。
まず、この「1984年」の舞台となるファシズム国家も、議院内閣制を取るから英国もだと思いますが、日本と同様、省庁に行政機関が分かれています。
[真理省 ミニストリー・オブ・トゥルー]
ニュースピークでの名称:ミニトゥルー
この建物の白い壁面に掲げられている有名な3つのスローガンが
戦争は平和なり
自由は隷従(れいじゅう)なり
無知は力なり
です。
報道、娯楽、教育、芸術を担当します。
[平和省 ミニストリー・オブ・ピース]
ニュースピークでの名称:ミニパックス
戦争を担当。
[愛情省 ミニストリー・オブ・ラヴ]
ニュースピークでの名称:ミニラヴ
法と秩序の維持。
[潤沢省 ミニストリー・オブ・プレンティ]
ニュースピークでの名称:ミニプレンティ
経済問題。
ここからは、実際にどのような装置を用いて、主人公らを監視体制に入れているかを見ていきます。
テレスクリーン
受信と発信を同時に行う。
声を殺して囁く(ささやく)くらいは可能だ。
としても、それ以上の音を立てると、どんな音でもテレスクリーンが拾う。
もちろん、いつ見られているのか、いないのかを知る術はない。
どれほどの頻度で、またいかなる方式を使って、<思考警察>が個人の回線に接続してくるのかを考えても、所詮当て推量でしかなかった。
誰もが始終監視されているということすらあり得ない話ではない。
自分の立てる物音はすべて監視され、暗闇のなかにいるのでもない限り、一挙手一投足にいたるまで精査されていると想定して暮らさなければならなかったー
いや、実際、本能と化した習慣によって、そのように暮らしていた。
<現実コントロール>
ニュースピークで言う<二重思考>
現在真実であるものは永遠の昔から永遠に真実である、というわけだ。
実に単純なこと。
必要なのは、自分の記憶を打ち負かし、その勝利を際限なく続けることだけ。
『党のスローガン』
”過去をコントロールするものは未来をコントロールし、
現在をコントロールするものは過去をコントロールする”
<反セックス青年同盟>
男女ともに完全なる禁欲を目指すべきであると唱導。
<二分間憎悪>
突然、街中で始まるテレスクリーン番組であり、その憎悪の対象は、謀反者・ゴールドスタインであることが多い。
見ている者を、いつの間にか謀反者、ファシズム国家への反逆者への敵意を剥き出しにさせ、思わず無我夢中でシュプレヒコールをあげずにはおれなくさせる。
その時、人々は完全に思考停止に陥っている。
「わたしに調子を合わして。
はい、イチ、ニ、サン、シ!
イチ、ニ、サン、シ!
さあ同志の皆さん、もっと元気を出して!
イチ、ニ、サン、シ!
イチ、ニ、サン、シ!
・・・・・・・」
by G-Tools
これらの装置に似た装置で、現在、日本に限らず、世界で監視カメラが張り巡らそうとしています。
この監視カメラの配置に警鐘をならす人がいます。
しかし、装置という言葉は、そのバックボーンとなる思想なり背景を含みます。
僕には、監視カメラは、防犯のためというより、ただ何となく付けた方が安全だから・・・というように見えます。
例え、防犯のためであっても、この監視カメラが張り巡らせることを、自身どう考えていいか、まだよくわからないのです。
しかしながら、「1984年」の人々は、いつもテレスクリーンに撮されていることを意識しながら生活しています。
一方、防犯カメラに囲まれて生活しながら、我々は、普段、カメラを意識していません。
それって、もしかして「1984年」の世界より恐ろしいことかも知れません。