斎藤耕平氏の『人新世の「資本論」 (集英社新書)』を読み終えて、次なる時代に大いに興味を持っていたところ、新聞でアナキズムの特集記事があった。
今、一部でアナキズムに焦点が合っているようだ。
記事を読むと、僕がアナキズムに抱いていた、無政府主義を訴え、テロを繰り返すイメージと大分違っていた。
どうも、武者小路実篤らの運動に近いようである。
という訳で、もっとアナキズムを知ろうという事で、紹介されていた中の1冊である本書を手に取った。
本書を読むことで、海外のアナキズムの全体像を得られた。
アナキズム入門 (ちくま新書1245)
国家なんていらない、自由に生きよう――プルードン、バクーニン、クロポトキン、ルクリュ、マフノの思想と活動を生き生きと描き出す。
内容(「BOOK」データベースより)
国家なんて要らない。資本主義も、社会主義や共産主義だって要らない。
いまある社会を、ひたすら自由に生きよう―そうしたアナキズムの思考は誰が考え、発展させてきたのか。
生みの親プルードンに始まり、奇人バクーニン、聖人クロポトキンといった思想家、そして歩く人ルクリュ、暴れん坊マフノといった活動家の姿を、生き生きとしたアナーキーな文体で、しかし確かな知性で描き出す。
気鋭の思想史研究者が、流動する瞬間の思考と、自由と協働の思想をとらえる異色の入門書
森元斎
1983年東京生まれ。中央大学文学部卒業。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。
博士(人間科学)。専門は哲学・思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
<レビュー>
著者が紹介する鶴見俊輔のアナキズムの定義
『アナキズムは、権力による強制なしに人間がたがいに助けあって生きてゆくことを理想とする思想』である。
僕は、アナキズム、無政府主義というのは、国家転覆を狙ってテロを繰り返すものかと思っていたが、主流は、そうではなかった。
ダーウィンが相互扶助を唱えているとは知らなかった。
『もっとも繁栄し、もっとも多くの子孫を作る群れは、もっとも共感し合うメンバーを最大に擁したものである。』
適者生存は、激烈な生存競争によりもたらされると考えられているが、相互扶助を行った生物こそが子孫を繁栄させるというのだ。
本書は、非常にフランクにくだけた文章で書かれているが、著者の森元斎は、アナキズムに関する本が現在ほとんど書かれていない事を考慮し、執筆を決め、資料を求めてスイスのローザンヌのアナキズム文献センターまで行った、本格的な書である。
海外のアナキスト5人が紹介されているが、本書を読むことにより、アナキズム全体がわかるようになっているのではなかろうか。
更にアナキズムについて知りたくなったが、残念なのは、読書案内がないのである。