いずみと僕とマウンテン・カフェ 2


 

幾つかの店を廻り、僕は、マウンテン・カフェの前に立っていた。

「今日、マスター、いるかな?」

ドアの前から、店内を覗き込んだ。

店内には、以前の彼女が、コップを洗っていた。

(今日もマスターは留守のようだ。}

一応、挨拶をしておこうと思い、扉を開けた。

「こんにちわ。」

「こんにちわ。」

「今日も、マスターは留守のようですね。」

「今日は、しばらくすると戻ってきますよ。」

「そうですか。じゃ、しばらく待たせて貰います。」

椅子に座り、コーヒーを頼み、文庫本をパラパラ、めくっていた。

なかなか洒落たカフェだ。





音楽に煩い僕でも、この店のBGMには納得してしまう。

「ここ、長いの?」

「あっ、はい。高校生の時、よく通ってて、大学生の時から、バイトに入ってます。」

「そうだね。美味しいよ!コーヒー。」

「ありがとうございます。」

「ここのインテリアは、オーナーの趣味?」

草薙は、ゆっくり、店内を見回しながら、話した。

「えぇ。多分。私が、女子校生の時代から、こんな感じでした。」

「でも、その隅のコーナーが、少し変わったかな。」

「洒落てるよねー。」

「オーナーさん、趣味がいいから。」

何だか、仕事の話の敷居が高くなったような気がした。

「オーナーさんって、どんな人?」

「女性の私でも憧れてしまうような、カッコイイ女性です。」

「ふ~ん。そーなの。」

「美人なの?」





「とても美人な人です。」

草薙は、どういう美人なタイプか、少し想像してみた。

洒落たカフェのインテリアと高いセンスの音楽の趣味・・・・。

この地ではなく、東京かどこかのセレブなマダムというのを、イメージしてみた。

が、それでは、バブルぽくない、趣味のいいインテリア、どこかで聴いたようで、全く聴いたことのないハイセンスなミュージック・・・・。

少し、そぐわない。

細身で、黒のスカートに、ブレザーに身を包んだ細長の、何処か近寄りがたいイメージの女性・・・・。

そんな人だろうか?

「マスター、よく話すの?」

「どうでしょう?私とは、盛り上がると、よく話しますが、マスターから、積極的に話すタイプではないかも知れませんね。」

少し、仕事の話を切り出すのに、緊張が高まった。

チャラン、チャラン。

扉のベルの鈴の音が、店内に鳴り響いた。

草薙と店の女の子が、同時に、ドアの方を向いた。

熱い太陽をバックに、細身のシルエットが浮かんでいた。





僕の瞳の中に、そのシルエットが焼き付き、頭の中で、何かの警報がなったのを、僕は、僕自身から距離を取りながら、聞いていた。

 

 


この「いずみと僕とマウンテン・カフェ」は、Google+ で、思いつくままに書いていたショート・ショートの一つであり、それらのショート・ショートは、Google+ のアカウントを何回か削除するうちに、紛失してしまいました。

辛うじて、僕の印象に残っている、この「いずみと僕とマウンテン・カフェ」は、1話を元に、Google+ とは異なったストーリー展開を辿っていく予定です。

 

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