[ 書評 ] 『文化人類学 (ブックガイドシリーズ 基本の30冊) 』(人文書院)果たして、文化人類学の役目は終わったのであろうか。

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僕は、有機化学の講義室の一番後ろの席で、山口昌男の文化人類学の新書などを読んでいた変な学生であった。
ポストモダンの知と戯れる、知の楽しみというテーゼの書籍と出会う前までに、読んできた本というのは、どこか取り組むという表現が、ぴったりな小難しい書籍であった。
そんな中、文化人類学の書籍は、人類、人間、人間社会の豊かさを感じさせるような、魅力的な分野であった。

この本は、その他の「基本の30冊」シリーズ同様、そんな文化人類学の名著の概要、学問的意義を紹介するものである。

文化人類学 (ブックガイドシリーズ 基本の30冊)

目次

第1部 人類学の確立 モーガン『古代社会』 フレイザー『初版 金枝篇』 マリノフスキー『西太平洋の遠洋航海者』 モース『贈与論』 ベネディクト『文化の型』 ミード『サモアの思春期』

第2部 人類学理論の深化 ファース『価値と組織化』 レヴィ=ストロース『野生の思考』 ダグラス『汚穢と禁忌』 サーリンズ『石器時代の経済学』 ベイトソン『精神の生態学』 ブルデュ『実践感覚』 ゴドリエ『観念と物質』

第3部 民族誌の名作 エヴァンズ=プリチャード『アザンデ人の世界』 リーチ『高地ビルマの政治体系』 ルイス『貧困の文化』 ターンブル『ブリンジ・ヌガク』 ギアツ『ヌガラ』 スミス、ウィスウェル『須恵村の女たち』

第4部 批判と実験の時代 クラパンザーノ『精霊と結婚した男』 フェルド『鳥になった少年』 マーカス、フィッシャー『文化批判としての人類学』 クリフォード、マーカス編『文化を書く』 ロサルド『文化と真実』

第5部 新世紀の人類学へ ラトゥール『虚構の近代』 レイヴ、ウェンガー『状況に埋め込まれた学習』 ラビノー『PCRの誕生』 アパデュライ『さまよえる近代』 アサド『世俗の形成』 グレーバー『価値の人類学理論に向けて』





読書レビュー

前半、どこかで聞いていても不思議でない古典的名著が紹介されている。
が、1980年代以降、グローバル化が進み、西洋の影響を受けていないような孤立した部族社会が存在しなくなり、文化人類学は、危機に陥った。

つまり、全ての世界が西洋化の影響を受け、孤立した部族社会が存在しなくなり、部族社会をフィールドワークし、その部族社会に、西洋文明とは異なる論理、システム、文化を見出し、それらを西洋文明に対峙させていくという彼らの仕事が消失したのである。

文化人類学という分野には、有能な人材が集まっており、1980年代以降を中心に、近年においては、今後の文化人類学の進むべき道というようなマニフェストのような名著が紹介される。
が、その後、この本の紹介の中では、そのマニフェストに相応しい名著が、紹介されていない。

彼ら文化人類学者の役目は、終わったのであろうか?

文化人類学者らが、世界の中のマイノリティーを研究してきたから、今度は、文明社会内のマイノリティーをフィールドワークしだすと、フィールドワークを行っている社会学との違いが、わからなくなる。
それとも、今後、新しいマニフェストに相応しい名著が、誕生するのであろうか。
今後に注目である。

余談であるが、彼ら文化人類学者は、その思考パターン、感受性において独特であり、彼等の専門でなくても、彼らの書いた文章は、とてもユニークで面白い。
日本なら、山口昌男栗本慎一郎青木保らであろうか。






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