新書大賞受賞 内田樹 『日本辺境論』の内容紹介


専門はフランス現代思想ですが、専門にとらわれず教育論など多くの著作がある内田樹(たつる)氏であるが、この度、この『日本辺境論』で新書大賞を受賞したようです。
新書大賞の詳細はコチラ。   新書大賞〈2010〉

「はじめに」で内田樹(たつる)氏は、この『日本辺境論』は「辺境人の性格論」は丸山眞男からの、「辺境人の時間論は澤庵禅師(たくあんぜんじ)からの、「辺境人の言語論」は養老孟司先生からの受け売りであり、ほとんど新味がないとしています。
しかし、僕にとって丸山眞男は馴染み深いものでありますが、澤庵禅師(たくあんぜんじ)や養老孟司氏の言語論に疎い僕にとっては十分、新味のある論であった。
そして何故、そんな新味のないと言う日本人論を繰り返すのかというと、内田樹(たつる)氏はごみ掃除に例えています。
また、多くの先人たちが、その骨身を削って築いた日本人論を私たちは、まだ内面化していないのではないかと内田樹(たつる)氏は語っています。

そして中華または世界に対して辺境人である日本人をマイナスとして捕らえるのではなく、とことん辺境で行こうではないかという提案を内田樹(たつる)氏はしています。






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<目次>
Ⅰ 日本人は辺境人である
Ⅱ 辺境人の「学び」は効率がいい
Ⅲ 「機(き)」の思想
Ⅳ 辺境人は日本語と共に

<内容紹介>
Ⅰ 日本人は辺境人である
内田樹(たつる)氏は、「大きな物語」が失効した事を嘆き、本書『日本辺境論』を執筆した動機も、そんな「大きな物語」を語る知識人が減った事への異議申し立てだという。
そんな「大きな物語」が失効した主因は、内田樹(たつる)氏によるとマルクス主義の凋落だと言う。
僕はマルクス主義の凋落だけが「大きな物語」が失効した原因とは考えないが、日本の現代思想の期待の星である東浩紀などが、『動物化するポストモダン』などで「おたく」などミニマムな素材にして「小さな物語」を語るのには、それはそれで意味があるだろうが、何だかイライラさせられてしまいます。





梅棹忠夫の『文明の生態史観』を引いて、本書の主張を内田樹(たつる)氏は「ほんとうの文化は、どこかほかのところでつくられるものであって、自分のところのは、なんとなくおとっているという意識に」に日本人が取り憑かれているとしています。
ただ、このことを内田樹(たつる)氏はマイナスばかりではなく、日本人のしたたかさも生み出していると主張します。
旧来のマルクス主義者に見られるように、このことを後進性とかいったような捉え方ではなく、古来からの日本人の基本的特性であるとした点に、この内田樹(たつる)氏の『日本辺境論』の新しさというものがあります。
外来思想を受け入れる時の、その変容のパターンには驚くほどある共通した態度がみられるとし、私たちはたえず新しいものを外なる世界に求めていると丸山真男の言葉を借りて表現しています。

また、私たち日本人は他国との比較「よその国はこうこうであるが、わが国はこうこうである。だからわが国のありようはよその国を基準にして正さねばならない。」という文型でしか語れないと内田樹(たつる)氏は指摘します。
最近の保守派の論客が語る「よその国はどうであろうと」とかや日本文化特殊論もやはり他国の比較で自国のことを考えるという点では同じかもしれませんね。
また、我が国のいわゆる現実主義者は既成事実しか見ておらず、自らが「現実」を作り出そうとしないことを、先の第二次世界大戦中の出来事を引いて興味深く語っておられます。

僕は無性にもう一度、丸山眞男の「超国家主義の論理と心理」が収められている『〔新装版〕 現代政治の思想と行動』を読み直したくなりました。
憲法九条と自衛隊の矛盾についても、日本人が採用した「思考停止」についても内田樹(たつる)氏は日本人の狡知の一つだと位置づけます。

Ⅱ 辺境人の「学び」は効率がいい
我々、日本人が「ほんとうの文化は、どこかほかのところでつくられるもの」であると太古の昔から無意識下に考えて、その「ほんとうの文化」を学ぼうと考えていたらどういうことが起こるでしょうか?
そうです。聡い人は、もうお気付きですね。我々、辺境人は「学び」の効率がいいのです。
このことは、本書『日本辺境論』で初めて僕は気づかされました。
このことを、内田樹(たつる)氏は「優れた学習装置」である“道”について考察しています。
武士道、茶道などの指定と弟子らが織り成す“道”です。
また、学びへの過剰適応と呼ぶ、我々が「立場が上とされる人」への過剰適応についても。

Ⅲ 「機(き)」の思想
ここで内田樹(たつる)氏は、「機(き)」という概念を手がかりにして、「時間意識の再編」という哲学的課題に宗教者たちがどう答えたかについて澤庵禅師(たくあんぜんじ)の考え方を引用し、我々、辺境人の主体について考察しています。
そして、そのように研ぎ澄まされてきた主体は、外来から受け入れるべきものとそうでないものについて先駆的に(アプリオリに)知っていると内田樹(たつる)氏は言うのです。

Ⅳ 辺境人は日本語と共に
そして内田樹(たつる)氏は、日本の辺境性をかたちづくっているのは日本語という言語そのものであるという仮説を、ここで吟味します。
英語のIを日本語では、私、僕、俺とかいうふうに幾つもの人称代名詞が存在することを指摘することから始まり、日本語は、表意文字である漢字と表音文字であるかなを併用する特殊な言語であり、漢字と仮名は日本人の脳内の違う部位で処理されており、そのことが日本において「マンガ」という表現手段が特異的に発展した理由であると、養老孟司氏の指摘を借りて主張されています。
また、教養書において、時々見られる一般読書に解り易いように、難解な欧米等の哲学書の引用とかを噛み砕いて話法も、ここ日本だけに見られるものだそうです。

内田樹(たつる)氏自身が「あとがき」や「はじめに」で何度も繰り返されているように、この『日本辺境論』は大風呂敷で、議論もあちらこちらに飛び火するので、読んでいる時は、「まとまった意見」というようなものが見えず、面白みにかけているように感じたのですけれども、大風呂敷だからこそ、この『日本辺境論』内の議論は、大いに発展させるべきものが沢山あると思います。





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  1. 内田樹『日本辺境論』

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