いずみと僕とマウンテン・カフェ 4


 

初夏の前の春の陽気の暖かい空気に包まれながら、僕は、マウンテン・カフェの前で、少し大きな深呼吸をした。

今日は、店内とスタッフの撮影だった。

「潔子さん、少し笑顔で!」

コンパクトデジカメで、店内を、あちこち撮影した後、スタッフ撮影に入っていった。

「両手を少しだけ、重ねる感じで。」

潔子さんは、少しぎこちなくポーズを取って、笑顔を作っていた。

20枚近く撮り、いずみさんの撮影となった。

太陽光に照らされ、少しはにかんだファインダー越しのいずみさんは、絵画のように美しかった。

「じゃ、バストアップから撮影して行きます。」





ファインダー越しに、いずみさんと目と目があった。

時間が、ゆっくり流れ、僕の意識は、上空30mにあった。

上空10m、5mと徐々に意識が戻って来て、ハッと目覚めたように、ファインダーを見やった。

 

一通り、撮影が終わり、あと取り残した所はないかと、店内を見回した。

出口付近は、撮り終えている・・・・、テーブル席もOK。

カウンター席も撮影済み。

そうだ。カウンターの内側から、店内を何枚か、撮影しておこう。

「いずみさん。カウンター席の内側、入っていいですか?」





「あぁ。どうぞ。どうぞ。」

草薙は、ゆっくり、店内を横切り、カウンターに入っていった。」

「いずみさんと潔子さんの入った写真も、5枚くらい、撮っておこうか。」

草薙は、カウンターの真ん中ら辺で、カメラを構え、数枚、撮影した。

「ありがとうございます。」

「あと、何枚か、撮影させてもらいます。」

何枚か撮影し、テーブルと同じ高さの位置で、撮影しようと、少し屈むと、カウンターの下に、いづみさんと男が写っている写真立てが一際存在感を現し、飾られていた。

草薙の動揺は、大きかったが、冷静を装いながら、後の撮影を終えた。

 

「あとは、実際にデザインするだけなので、完成すれば、お持ち致します。」





「NGなら、遠慮なく仰って下さい。」

「数回なら、手直しします。」

草薙は、心中の動揺を、いずみさんや潔子ちゃんに悟られないよう、少し俯向き加減に店を出た。

 

(Visited 28 times, 1 visits today)

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください