扉から、マスターが、ゆっくり、入るのを、まるで、ハリウッドのレッドカーペットの上を、女優が歩く姿を眺めるように、うっとりとしながら、眺めていた。
「お客さんが、先程からお待ちしてます。」
「こんにちは。私、Web制作をしてまして、此方のお店も、Web展開とかいかがと思いまして。」
草薙は、そう言いながら、名刺を手渡した。
マスターである、しっかりとした性格の雰囲気がある女性は、名刺に目をやりながら、「ホームページの制作ですよね?」と、少し俯き加減に応えた。
僕は、マスターの顔を見やり、細い眉が切れ長であるのを、鋭く、チェックした。
長い眉毛と細くて長い唇が、女性の顔を上品で清楚な雰囲気にしていた。
「そうです。グルメの口コミのサイトには掲載されてますか?」
「私は、知りませんが、潔子ちゃんが、うちの店が、載ってたって。」
と、カウンターの向こうの潔子に目をやった。
「そうですか。口コミサイトに掲載されていれば、そこから、ホームページに誘導すれば、お客さんに、どんな店か、よく知ってもらえますよ。」
「このお店、洒落てるから、きっと、お客さん、増えますよ!」
と、草薙は、店内を見回しながら、言った。
「そうねぇ。口コミサイトで、他人に任せてばかりいられないし。」
「お店も、そこそこだし。」
「お話、聞かせて下さい。」
「そうですか。ありがとうございます。」
草薙は、いつもと違い、私情を挟みつつ、少し力を入れて話を始めた。
「次回までに、簡単なデザイン、お持ち致します。」
「はい。楽しみにしてますわ。」
そうして、草薙は、店を後にした。
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